バティック(batik )とは染めようとする色以外の所を蝋で覆う技法と、その技法で染められた布を指す。チヤンティンと呼ばれる道具の爪の様な形状の細い筒先から滲み出る蝋で防染した布を藍の生成液に浸染、その後脱蝋すると防染された箇所は染まらず布の地色の白のままに残る現象を利用した「白と藍色」のシンプルな染め布が原初的なバティックとの説がある。 チヤンティンの爪先を布に押し当てると最も単純には「点」が打たれる。現在我々が知っている華麗でマジカルな趣きのあるバティックの源を辿ると白い小さな「点」が規則正しく配置された手紡ぎ糸で手織りされた粗い綿布の素朴なインディゴブルーの布だったのかもしれない。「バティック」の語源には「点を配置する」という意味も含まれているとか、、。 島のここかしこの村単にで製作されていたバティック、王宮内で製作されていた貴族の権威を示す高貴なバティック、憧れの王宮風を取り入れた庶民のバティック、オランダ東インド会社の管理下で重要な輸出品として製作されるバティック、合成染料普及で量産が可能になったバティック、合成繊維に合成染料でプリントされるカラフルなコンテンポラリー・バティック 手法の変遷からは、次の4種に分類される①チヤンティンによる手描き batik tulis②手描き+チャップによる型押し併用 batik combinasi ③チャップによる型押し batik cap ④現代印刷手法 printed batikそれでは、本品の帰属するバティックのカテゴリーは量産が可能にならんとする頃に②の手法で製作されたbatik combinasiと思われる。色調と柄ゆきからはジャワ内陸部のジョグジャカルタが有力で、王宮文化の影響を踏襲した品の良いバティック。50年〜60年前のもので、ソガ染料が程よく褪色した風合いが好ましい。